HIF(hypoxia-inducible factor)は、低酸素状態になった時に、人間の体を守るための因子である。
低酸素状態になると、赤血球を増加させることで、臓器に対する酸素供給を増やすエリスロポエチンや,血管新生を促すことで酸素供給を助ける
vascular endothelial growth factor(VEGF)に作用をする。
ただ、HIFの発現量は、HIF-PH(HIF-prolyl hydroxylase)によって調節がされている。通常の酸素濃度下では、
HIF‐PHによって破壊されるが、低酸素状態になると、HIF‐PHの発現量が減って、酸素の運搬を担う赤血球の増加などが促される。
HIF-PH 阻害薬は、低酸素応答機構がエリスロポエチン産生を調節することを利用した、通常の酸素濃度下でも、
エリスロポエチンの産生を調節して、赤血球の増加を促し、貧血を改善する、新しい機序の腎性貧血治療薬となる。
低酸素応答機構の解明の功績により Gregg Semenza,Peter Ratcliffe,William Kaelin Jr. が
2019 年のノーベル生理学・医学賞を受賞している。
日本では、2019年11月に最初のHIF‐PH阻害薬が発売となり、現在は、5剤のHIF‐PH阻害薬が使用可能となっている。
従来の注射薬のrythropoiesis stimulating agents(ESA)とは、異なり経口での服用が可能となっている。
ただ、経口薬で全身性の作用も伴う可能性もり、理論上は、低酸素に対する防御をすることで、
生体保護効果が期待できるが、癌や網膜疾患など血管新生が
疾患の増悪に働くような病態では HIF による防御機構による副作用の可能性が懸念おり、今後の課題となっている。
参照:日本腎臓学会 HIF-PH 阻害薬適正使用に関する recommendation